千葉県の吉野酒造。

お酒の銘柄というのは、本当に一期一会だなあと感じます。3月発売の拙著『物語で知る日本酒と酒蔵』では、そのあたりについても少し語っていますが、千葉の地酒「腰古井」あたりが僕にとって象徴的。

「腰古井」に出会ったのは昨年のこと。戦跡取材で千葉県東金市を訪れた際、宿の近くの居酒屋でたまたまオーダーしたのがきっかけでした。ひとくち啜って即「うまい!」と思っても、地酒というのはどこでも飲めるものではないのがいいところ、というのが僕の持論。飢餓感に煽られ、心理的なプレミア感がどんどん醸成していき、ついには「よし、取材を兼ねて『腰古井』を造っている蔵へ行ってみよう」と相成りました。

というわけで、千葉県勝浦市のJR上総興津駅まで特急に乗り、そこからタクシーで約10分。吉野酒造さんにお邪魔してきました。

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米の磨きのコントロールにはこだわっているそうで、コスト度外視の自家精米。詳細は近著に譲りますが、全体として非常に丁寧な酒造りをモットーとしていることが、よーく伝わってきました。

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ちなみに蔵の地下から組み上げた水は、成分的に酒造りには適さなかったため、向かいの山を繰り抜いて湧水をパイプで運びだすという荒業を、創業当時から続けているのだそう。「先代のアイデアに感謝」とは現当主の弁。実際にこの地下水を飲ませてもらいましたが、驚くほど淡麗で、「この水で作る味噌汁が我が家のご馳走だった」とか。うらやましい!

下の写真は、その横井戸の入口部分。なんだか、戦跡にも通じるロマンが……。

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見学後、たっぷり試飲もさせていただきましたが、中取りもにごりも本当に旨いです。予定外にたっぷり買い込んでしまいました。生の新酒も一升瓶でストックしているので、これはまた近いうちに人を集めて開栓しようかと。

ネットショップもあるようなので、興味のある方はこちらからぜひ。純米大吟醸で仕込んだ梅酒は、今のところ僕の中で生涯No.1リキュールです。